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官能小説|雪の幻 Sec.2忘れられない恋

Sec.2 忘れられない恋

雪菜は久しく恋愛からは遠ざかっていた。
単純にこれといった出会いがなかっただけなのだが、
それなりに何度か求婚されたこともあった。

だが、そもそも結婚自体に興味がなかったことと、
相手に何かしっくりこない違和感を感じていた。
それは価値観だったり食の趣味だったり、セックスだったり様々だったが、
最終的にどうしても心に拭いきれない想いがあったのだ。

―― 橋本将俊の存在。

25歳のときに出会った男で、彼にはすでに妻子がいた。
俗にいう不倫関係ではあったが、雪菜は真剣だった。
すべてを認め、許し、爪の先や毛穴に至るまで、
彼のすべてを全身全霊かけて愛していた。

心も体もすべて彼に形作られ、
雪菜の存在自体が将俊の存在ありきだと思えるほどだ。

どこかの学者が「I love you」は「あなたのためなら死ねる」と訳していたが、
雪菜はその意味をすんなりと理解できた。
将俊への愛は、命すら捧げられるほどだった。
将俊はもはや雪菜の奥深くに刻まれているのだった。

すでに彼との別れから10年以上経っているが、
後にも先にもあの恋を超えるような経験をしたことはない。


松田との打ち合わせでは
大まかなスケジュールとイベントの内容について決め、席を立った。

打ち合わせは滞りなく、雪菜は松田に対し、話しやすい人間だと感じた。
頭の回転も早く、こちらの言い分もすぐに理解できる。

もっと話をしてみたい、そう自然に思える男だった。
雪菜は久しぶりに明るい気持ちになり、
春のような暖かな日差しを受けながら、足取りも軽く自社に戻るのだった。
関由佳
Posted by関由佳

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